売れない画家の真知寿と妻である幸子の夫婦愛を描く。芸術やアーティストにとって大事なものはなんなのか―。
監督・脚本・編集:北野武 音楽:梶浦由記 撮影:柳島克己 出演者:ビートたけし |
北野武監督による、自己を投影した3部作(『TAKESHIS'』、『監督・ばんざい!』、『アキレスと亀』)の最後の映画。また、「アキレスと亀」本来の意味は、足の速いはずのアキレス(人間)が足の遅い亀に競争しても勝てない事を証明する数式上のパラドックス。
うん、面白かった!3部作の中では、これが一番我々に理解しやすい映画だと思いました。
で、前2作で批判されまくった北野武監督は、この映画に我々に対する皮肉を残していきました。それは、冒頭の「アキレスと亀」の解説の部分がアニメーションであったこと。また、途中で、サイレント映画みたいに説明文があったこと。全2作にはなかった事です。「これくらいなら観客にも伝わるだろう」的な感じに・・・・。
この映画は、少年期・青年期・中年期の3つから構成されていて、北野さん本人が出てくるのは中年期からです。
少年期で父と母、親友の又蔵を亡くし、青年期で同級生2人を亡くし、中年期には自らの娘も亡くしてしまいます。
最終的に娘を亡くした真知寿は、2回自殺を謀ります。1回目は、車の排気ガスを車内で吸って死のうとしますが結局生きてしまいます。2回目は、小屋の中で火をつけ、そこで絵を描きながら死のうとしますが結局救助されます。
で、心身ともにボロボロになった真知寿は、拾ったコーラの錆びた空き缶をフリーマーケットで20万円で売ります。20万円の錆びた空き缶に誰も興味を示さない中、ただ一人、離婚した妻の幸子が「一緒に帰りましょう。」と呼びかけます。そして、2人は錆びた空き缶を蹴りながら帰っていきます。
北野武監督は、これが言いたかったのだと思います。最後のこのシーンがまさに「アキレスと亀」。アキレスが妻の幸子、亀が真知寿。最終的に妻が主人公(の芸術性)に追いついたのです。
と同時に、もう1つの解釈ができます。全てを失くしてしまった真知寿は、最後に見つけたコーラの錆びた空き缶を20万円でフリーマーケットに出します。つまり、自分の芸術的才能の望みを錆びた空き缶に賭けたのです。しかし、誰も買おうとはせず、離婚した妻が助けに現れた。最終的に真知寿は「自分には芸術的才能がなかったのか・・・。」と自覚し、自分の芸術的才能の望みである錆びた空き缶を蹴って帰って行ったんだと思われます。
いや~、しかし笑かしてくれましたね~。久々の一般人でも理解できる北野武映画でした。満足満足~♪
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